千葉地方裁判所 平成9年(わ)1074号 判決 1997年12月25日
本店所在地
千葉県四街道市物井八六五番地一
浅木水道株式会社
(代表者代表取締役 浅木邦彦)
本籍及び住居
千葉県四街道市物井八六五番地の内一
会社員(元会社役員)
浅木榮一
昭和六年一二月二三日生
主文
被告人浅木水道株式会社を罰金六〇〇万円に、被告人浅木榮一を懲役一年一〇月に処する。
被告人浅木榮一に対し、この裁判確定の日から三年間刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人浅木水道株式会社(以下、「被告会社」という。ただし、平成七年八月二九日以前は、資本金五〇〇万円の有限会社。平成七年八月三〇日に資本金一〇〇〇万円に変更。平成七年九月一七日に株式会社に組織変更し、資本金は一〇〇〇万円。)は、千葉県四街道市物井八六五番地一に本店を置き、ガス及び上下水道工事の請負等を目的とする株式会社であり、被告人浅木榮一は、平成九年三月一八日に辞任するまでは、その代表取締役としてその業務全般を統括していた。被告人浅木榮一は、会計事務所経営者堀江吉五郎(税理士法違反-税理士の資格がないのに税理士業務を行った事案及び法人税法違反-本件の共犯などとして公判請求済)と共謀の上、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の製品製造原価を計上するなどの方法により所得を隠した上、
第一 平成四年一一月一日から平成五年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二八〇一万五二六八円(別紙1の(1)修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成五年一二月二八日、千葉県成田市加良部一丁目一五番地の成田税務署において、成田税務署長に対し、その所得金額が八八四万九三三三円で、これに対する法人税額が一八三万六四〇〇円であるとするうその法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させて不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額九〇二万三六〇〇円と申告税額との差額七一八万七二〇〇円(別紙1の(2)ほ脱税額計算書参照)を免れた。
第二 平成五年一一月一日から平成六年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四三六八万一五二二円(別紙2の(1)修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成六年一二月二八日、成田税務署において、成田税務署長に対し、その所得金額が一六三四万〇五八八円で、これに対する法人税額が五〇二万〇九〇〇円であるとするうその法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させて不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一五二七万三七〇〇円と申告税額との差額一〇二五万二八〇〇円(別紙2の(2)ほ脱税額計算書参照)を免れた。
第三 平成六年一一月一日から平成七年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二三七二万四三四二円(別紙3の(1)修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成八年一月四日、成田税務署において、成田税務署長に対し、その所得金額が三三一万〇八七七円で、これに対する法人税額が八九万三五〇〇円であるとするうその法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させて不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額八一〇万三二〇〇円と申告税額との差額七二〇万九七〇〇円(別紙3の(2)ほ脱税額計算書参照)を免れた。
(証拠)
括弧内の甲乙の番号は、検察官の請求番号を示す。
全部の事実について
1 被告人浅木榮一の
(1) 公判供述
(2) 検察官調書(乙1から5、7、8)
2 堀江吉五郎(甲18から20、23)、浅木邦彦、河内綾子、堀江節、福山良一、細谷定生、安田一波、加賀美祥司(二通)の検察官調書(謄本)
3 報告書(謄本-甲1から9)
4 商業登記簿謄本(甲24、乙9、10)
(法令の適用)
被告会社
罰条
第一、第二
法人税法一六四条、平成七年法律第九一号(以下、「改正法」という。)附則二条一項本文、同法による改正前の刑法(以下、「改正前刑法」という。)六五条一項、六〇条、法人税法一五九条一項、二項
第三 法人税法一六四条、刑法六五条一項、六〇条、法人税法一五九条一項、二項
併合罪の処理
改正法附則二条二項、刑法四五条前段、四八条二項
被告人浅木榮一
罰条
第一、第二
改正法附則二条一項本文、改正前刑法六五条一項、六〇条、法人税法一五九条一項
第三 刑法六五条一項、六〇条、法人税法一五九条一項
刑種の選択 (いずれも懲役刑を選択)
併合罪の処理
改正法附則二条二項、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条
(犯情の最も重い三の罪の刑に加重)
刑執行猶予 改正法附則二条三項、刑法二五条一項
(量刑の理由)
本件は、被告人浅木榮一が、被告会社の代表取締役の立場で、税理士の名義を借りて税務申告等の税理士業務を無資格で行っていた共犯者と共謀の上、延べ三事業年度の法人税につき、合計二四〇〇万円を超える税金を免れた事案である。
犯行の態様は、共犯者があらかじめ申告所得額と納付税額を計算した上、それに見合った架空経費の計上をして脱税を図り、粉飾決算に当たっては架空の領収書や請求書をわざわざ入手した上行ったものであって、計画的かつ巧妙である。しかも、本件全体の脱税額は多額であり、ほ脱率も七六パーセントを超えるもので高い。本件が、国民の健全な税負担の感覚に与えた影響も大きい。そうすると、被告人の刑事責任を軽く見ることはできない。
しかしながら、本件で法人税をほ脱した被告会社は、いずれも国税当局の指導に従って本件各事業年度分の法人税を修正申告しており、加算税及び延滞税を含めた額を完納しており、また、被告人浅木榮一は、本件発覚以来、事実を大筋で認めて捜査等に協力し、公判廷においても反省の態度を示している。被告人浅木榮一には傷害罪の罪による罰金前科一犯のほかには前科がない。そのほかにも被告人浅木榮一の年齢及び家族の状況など、酌むべき事情も認められる。
以上のような諸事情を総合考慮して刑を定めた。
(検察官 山口敬之
私選弁護人 被告会社及び被告人浅木榮一 山崎巳義 各出席)
(求刑 被告会社 罰金八〇〇万円
被告人浅木榮一 懲役一〇月)
(裁判官 荒川英明)
別紙2の(1)
修正損益計算書
<省略>
別紙2の(1)
修正損益計算書
<省略>
別紙3の(1)
修正損益計算書
<省略>
別紙1の(2)
ほ脱税額計算書
<省略>
別紙2の(2)
ほ脱税額計算書
<省略>
別紙3の(2)
ほ脱税額計算書
<省略>